腹膜透析の導入にあたって
腹膜透析療法を始めるには、まず、カテーテルと呼ばれるチューブをお腹に埋め込む手術が必要です。
手術には従来法と段階的腹膜透析導入法(SMAP法)の2種類があります。
従来法
従来法では3週間~1か月程度入院して、カテーテル留置手術と腹膜透析を自分で行うための教育が行われます。手術では通常、全身麻酔や硬膜外麻酔をします。カテーテル留置後すぐに透析開始となります。透析開始直後は透析液量を少量から始め、1~2週間かけて患者に必要な透析液量まで増やしていきます。また、術後の状態に合わせて安静の度合いや食事内容が変化します。入院中に、腹膜透析に関する知識やバッグ交換などの手技、緊急時の対応などについての教育が医療スタッフから行われ、退院後に患者もしくは家族がきちんと治療を続けられるようになった段階で退院となります。
段階的腹膜透析導入法(SMAP法)
腎機能に余裕があって透析をするまでに時間のある場合、段階的腹膜透析導入法(SMAP法)が有効です。この方法は2回の入院が必要ですが、どちらも入院期間は短く1回目(カテーテル留置時)も2回目(カテーテル出口部作成時)も1週間程度で退院できます。この術法では、お腹の中にカテーテルを留置し、出口部作成をせずに皮下組織にカテーテルを埋没させておき、透析が必要となった段階で出口部作成術を行ってカテーテルを取り出し、直後から腹膜透析を開始します。
カテーテルを挿入した傷口が修復してから透析を開始するため、注入した透析液の漏れや、それによるトンネル感染の防止が期待でき、開始直後から十分な透析液量を注液することができます。腹膜透析に関する知識やバッグ交換などの手技など患者、家族への教育指導は、留置術後に外来で実施します。
腹膜透析療法では患者の腹膜を使って、患者もしくは家族の手でバッグ交換などの治療を行うため、以下のような場合には注意が必要です。
過去に腹部の手術をしたことがある | 手術内容によっては腹膜の癒着や硬化が生じることがあり、カテーテルの挿入が困難なことがあるため |
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人工肛門 | 人工肛門とカテーテルの出口部が近いとき、出口部の清潔を保てないことがあるため |
手指の運動障害、視力障害がある | バッグ交換の操作などの障害となることがあるが、補助具や器械の使用で対処可能な場合もある |
ヘルニア、腰痛がある | お腹の中に貯める液の重みでヘルニアや腰痛が悪化する可能性があるため |