合併症について

血液透析を続けていると合併症が起こることもあります。
どのような合併症が起こるかをよく理解し、早期発見や対処が大切です。

1. 不均衡症候群

体が透析にまだ慣れていない、透析導入期によくみられます。症状は、透析中から透析終了後12時間以内に起こる腹痛・吐き気・嘔吐などです。透析を行うことで体内の血液中の老廃物が急激に除去されてきれいになりますが、脳の中の老廃物は除去されにくく、体と脳との間に濃度差が生じます。そのため、脳の中の老廃物を薄めようとして脳は水をどんどん吸収するため、脳がむくみ、脳の内圧が高くなることで引き起こされる症状です。体が透析に慣れていけば徐々に起こりにくくなります。予防には、水分や塩分、タンパク質の制限を守ることで緩やかな透析を行う、透析時間を長くするなどです。

2. 高血圧

透析を始めたときは、多くの人に高血圧がみられます。頭痛、イライラ、吐き気、夜ぐっすり眠れないなどの症状があります。高血圧の主な原因は、水分や塩分の摂りすぎにより、それらが十分に排泄されず体液量が増加することで起こります。体重増加に気をつけましょう。また、高血圧は動脈硬化、心臓病、脳卒中、視力障害(眼底出血)などの原因にもなります。

3. 低血圧

低血圧はもっとも発生頻度の高い合併症といえます。特に血圧低下を起こしやすい状況として、高齢、糖尿病、低栄養、貧血、心機能障害などが挙げられます。自覚症状としては、あくび、吐き気、嘔吐、頭痛、動機、冷や汗などがみられます。透析での除水による循環血液量の減少に加え血管収縮能の低下、心機能障害が原因とされています。また、長期間透析を続けていると、次第に低血圧に移行することがあります。透析が困難になったり、めまいや全身倦怠感など日常生活に支障をきたしたりする人もいます。無症状のこともあります。対策としては、ドライウェイトを上げる、透析時の除水量を少なくする、バランスのよい食事をとるなどです。低血圧治療剤を使用することもあります。

4. 貧血

腎不全になると、腎臓で作られている造血ホルモン(エリスロポエチン)の分泌が低下し、貧血になります。また、血液中の尿毒素が増加することによって出血しやすくなったり、赤血球の寿命が短くなったりすることも貧血の原因です。症状は、疲れやすくなる、手足のだるさ、階段の上り下りのときの息切れや動悸などです。エリスロポエチンや鉄剤の注射などで改善されます。また、予防には十分な透析をする、栄養を十分に取る、適度に運動するなどです。

5. 感染症

透析患者は一般に感染に対する抵抗力が低下しており、感染症にかかる割合が高いです。穿刺部から細菌が侵入して起こるシャント感染、尿量が少ないために起こる尿路感染、風邪をこじらせて起こる肺炎、結核、輸血によるウイルス性肝炎などがあります。予防には、シャント部は常に清潔を保つ、栄養を十分にとるなどです。

6. 二次性副甲状腺機能障害

腎不全になると、リン(P)が腎臓で排泄されなくなり高リン血症になります。リンが上昇すると腸でのカルシウム(Ca)の吸収が悪くなり、血液中のカルシウムの濃度が下がってしまいます。そのため、カルシウム濃度を上げようとして副甲状腺という器官から副甲状腺ホルモン(PTH)という物質を分泌します。副甲状腺ホルモンは、骨を溶かし血液中のカルシウム濃度を上げようとする働きがあります。この現象が続くともろくて骨折しやすい骨となります。高リン血症を防止すること、骨の薬を服用することなどで予防できます。高リン血症を予防するには、透析によるリンの除去が限られているため、リンが多く含まれているタンパク質の摂取量を調整することが大切です。1日のタンパク質の摂取量の目安は、標準体重1kgあたり1.0~1.2gです。

7. アミロイド骨関節症

長期間透析を続けていると、アミロイドという物質が骨や関節に沈着し、骨や関節、肩や首などの痛み、しびれ、麻痺などの症状が出ることがあります。手術によって痛みやしびれは改善します。予防には、関節の働きを保つために、手首や指の屈伸運動をする、十分な透析を行うなどです。

8. 高カリウム血症

果物、生野菜、肉や魚の生ものなどカリウムを多く含む食品を摂りすぎると発生します。症状は、手足のしびれ、重い感じ、口のしびれ、脱力感、知覚異常、味覚異常、違和感などがあり、さらに血液中のカリウムの値が上がると脈が乱れ、心臓が止まることもあり大変危険です。予防には、食事によるカリウムの摂取量に注意することが第一です。カリウムは水に溶けやすいので、調理前に水にさらしたりゆでたりすることで、カリウム量を1/3~1/2程度まで減らすことができます。また、便秘や下痢、食欲不振などによるカロリー不足、体内での出血、発熱、透析不足などでもカリウム値は上昇するので注意が必要です。食事に気をつけていてもカリウム値が高い人は薬を服用します。