4.糖尿病性腎症
糖尿病性腎症は糖尿病の合併症です。糖尿病性腎症の場合、急に尿が出なくなるのではなく、段階を経て病気が進行します。このため、できるだけ早期に発見し、適切な治療をすることが重要です。現在は、糖尿病性腎症が原因で透析を受けることになった人が、全透析患者のうち44.1%(2012年末現在)と最も多い割合を占めています。
詳しくは「腎臓病に関する資料」をご覧ください
原因 | 糖尿病で血糖値の高い状態が長期間続くことで、全身の動脈硬化が進行し始め、毛細血管の塊である腎臓の糸球体でも細かな血管が壊れ、網の目が破れたり詰まったりして老廃物をろ過することができなくなるとされていますが、根本的な原因ははっきりしません。 |
---|---|
症状 | 病気の進行段階によって症状が異なります。下記の表を参照してください。 |
治療 | 第2期(早期腎症)および第3期(顕性腎症期)では厳格な血糖コントロールを行ないます。血糖コントロールは、低カロリー食、運動療法が基本ですが、糖尿病薬の服用およびインスリンの注射も行われます。 第4期になると厳密な低タンパク食にする必要があります。腎不全期も、食事療法としてタンパク質の摂取制限を行いますが、血液中のクレアチニンの量の増え方によっては透析療法の準備をします。糖尿病性腎症には高血圧を伴うことが多いので、降圧薬の使用も重要です。 糖尿病性腎症の食事基準は下記の表を参照してください。 |
糖尿病性腎症の病期分類
病期 | 尿タンパク値(g/gCr) あるいは アルブミン値(mg/gCr) | 腎機能・GFR(eGFR) (ml/分/1.73m2) | 有効な治療法 |
---|---|---|---|
第1期 (腎症前期) | 正常 (30未満) | 30以上 | 血糖コントロール |
第2期 (早期腎症期) | 微量アルブミン尿 (30〜299) | 30以上 | 厳格な血糖コントロール 降圧治療 |
第3期A (顕性腎症期) | 顕性アルブミン尿(300以上) あるいは 持続性タンパク尿(0.5以上) | 30以上 | 厳格な血糖コントロール 降圧治療、タンパク質制限 |
第4期 (腎不全期) | 問わない | 30未満 | 降圧治療 低タンパク食、透析療法導入 |
第5期 (透析療法期) | 透析療法中 | 透析療法 腎移植 |
糖尿病性腎症の第2期(早期腎症期)では、ごく微量のタンパク質(微量アルブミン)が漏れ出てきますが、適切な治療によってタンパク質が漏れ出ない状態に戻すことができます。腎症が進行するともう少したくさんのタンパク質が尿に出てくるようになります(タンパク尿)。ここまで進行すると、次第に血圧も上昇し、高血圧によって血管が傷つけられ、さらに腎臓の状態を悪化させるという悪循環に陥ってしまいます。
糖尿病性腎症の第1期、第2期では自覚症状はほとんどありません。このため、尿の検査をしないと判断できないのです。第3期では、むくみ・息切れ・胸苦しさ・食欲不振・満腹感などの自覚症状があり、第4期・第5期では、顔色が悪い・易労感・嘔気あるいは嘔吐・筋肉の強直・つりやすい・筋肉や骨に痛みがある・手のしびれや痛み・腹痛と発熱などの自覚症状があります。第3期以降では、進行を遅らせることはできても、良い状態に戻すことはできないため、第2期の段階までで糖尿病性腎症をみつける必要があるといえます。
糖尿病性腎症の食事基準
病期 | 総エネルギー (kcal/kg※1/day) | タンパク質 (g/kg※1/day) | 食塩 (g/day) | カリウム (g/day) | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
第1期 (腎症前期) | 25~30 | 制限せず ※2 | 制限せず | 糖尿病食を基本とし、血糖コントロールに努める。タンパク質の過剰摂取は好ましくない。 | |
第2期 (早期腎症) | 25~30 | 1.0~1.2 | 制限せず ※2 | 制限せず | |
第3期 (顕性腎症期) | 25~35 | 0.8~1.0 | 7~8 | 制限せず 〜軽度制限 | 浮腫の程度、心不全の有無により水分を適宜制限する。 |
第4期 (腎不全期) | 30~35 | 0.6~0.8 | 5~7 | 1.5 | |
第5期 (透析療法期) | 透析療法患者の食事療法に準ずる |
※1 標準体重
※2 高血圧合併例では6gに制限する