2.慢性糸球体腎炎
糸球体の炎症によって、タンパク尿や血尿が出る病気を総称して糸球体腎炎と呼びます。
慢性糸球体腎炎(慢性腎炎)は、タンパク尿や血尿が長期間(少なくとも1年以上)持続するものをいいます。腎臓病の中でも最も多いものとして知られています。慢性糸球体腎炎は1つの病気ではなく、さまざまな病気の総称です。最近の研究によって、慢性糸球体腎炎の中にもいくつかタイプがあり、症状が進行しにくいものもあることが分かっています。
原因 | 免疫反応の異常によるものが多いと考えられています。 |
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症状 | 血尿、タンパク尿、高血圧、めまい、肩こり、むくみ(浮腫)、頭痛、倦怠感など。 |
治療 | 治療の基本は食事療養や薬物療法です。むくみが強い場合は、利尿薬を使用して血液中の塩分回水分の排泄を促します。血圧の維持に努め、症状の悪化を防ぎます。生活の上では、激しい運動や過労を避けます。 |
IgA腎症
慢性糸球体腎炎(慢性腎炎)の原因として多い病気。尿タンパク1g以上を放置すると10年でおよそ30%が慢性腎不全に移行するので、尿検査を必ず定期的に受けてください。
IgAは免疫グロブリン(抗体:immunogloburi)Aの略称で、この抗体はのど、気管支、腸などの粘膜を外敵から守っています。この障壁が弱いと、粘膜に感染した病原体の一部とIgAが免疫複合体を作って血液中に入り、腎臓に流れ着きます。腎臓の糸球体のフィルターにひっかかると、2~3か月かけてジワジワと炎症を起こして組織を破壊していきます。粘膜感染を繰り返すと腎臓にはどんどん免疫複合体がたまっていきます。IgA腎症では血液中のIgA濃度が高くなることがあります。IgA腎症は20代前半に発病のピークがありますが、10歳以下でも50歳以上でも発症することがあります。
原因 | いまだに病因は不明ですが、主に腎臓そのものよりも腎臓外にあることが想定されています。腎臓外の病因として、主にIgAの産生系に関わる異常が指摘されています。一方で、IgA腎症患者の骨髄の異常や、腎臓に沈着するIgAの沈着そのものの異常など、その病因は非常に多岐にわたり、十分な解明にはいたっていません。 |
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症状 | IgA腎症の大部分は無症状で、健康診断や学校検尿における尿所見異常で発見されることが大部分です。上気道炎、扁桃炎、腸炎(下痢、腹痛)などで38.0度を越える高熱を伴うとき、コーラ色の肉眼的血尿発作が特徴的。日本では肉眼的血尿の症状で発見される患者は約10%、ネフローゼ症候群(尿にタンパクが大量に漏れて浮腫をきたす状態)で発見される患者は5%以下とされています。 |
治療 | 病因が不明であるため、根本的な治療法は確立されていませんが、食事療法や薬物療法を行います。最近になり扁桃腺摘出(扁摘)とステロイド療法の併用(扁摘パルス療法)がよい成績をあげています。ただし、2011年7月現在ではこの治療法を行っているのは日本だけです。(参考:金沢医療センター) <食事療法> IgA腎症の食事療法は、①十分なエネルギー補給(カロリー34~40kcal/標準体重kgあたり) ②タンパク制限食(0.6~1.2g/標準体重kgあたり) ③食塩制限(食塩6g)が効果的です。IgA腎症に限らず慢性の糸球体腎炎では高血圧になりやすく、腎不全の進行速度と高血圧の程度は関係が深いため、血圧の低下および血圧日内リズムの正常化を目的とした食塩制限は重要です。 <薬物療法> A)抗血小板薬・抗凝固薬 B)降圧薬 C)副腎皮質ステロイド薬 |